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財前(現仙台)が19歳前後にイタリアのクラブに留学に行ったとき現地の監督はその技術の高さに相当驚いたそうです。
そして、同時にもっと早ければ、と嘆いたそうです。
というのは、技術面というより戦術面の問題で、19歳ではイタリアの戦術を覚えさせるには遅すぎるということらしいです。(17歳くらいならば何とかなるらしいですが)
私は,ヨーロッパサッカーの戦術がすべてとは思いませんので「なんだ財前もっと早く行けばよかったのに」とは思いませんでしたが(少しは思いましたが(笑))、ヨーロッパのなかでも特異な戦術をとるイタリアの監督が「イタリアで活躍したいのなら19歳では遅い」ということはうなずけました。
要するに即戦力ではなくて、自分たちで育成する選手は、自国のサッカーに影響を受ける前に骨のずいまでヨーロッパサッカーを染み込ませたいということだと思います。
そして、クラブチームの利益と効率を考えればそれは完璧に正しいとも思います。
しかし、自国のサッカーを発展させるのにその根本である選手育成を外国のクラブチームに頼るのでは、あまりに策がなさすぎです。
そしてそれは不安定かつ危険です。
クラブチームは自分たちの利益になるかもしれないと思って、わざわざ他国の若手を育てているのであって、決して世界にサッカーを広げよう(笑)などという高尚な理由ではありませんし、育てなければならないという義務でやっているのでもありません。
つまりそれが利益を生まないと思えば、すぐ止めます。
それから、最近のブラジルを見ると現実的な弊害が出ています。
それが原因で、自国の代表チームが弱くなっているのです。
ブラジルの有望選手は上記のような理由で15,6歳でヨーロッパのクラブに買われることがあります。
つまり、ブラジルの国内リーグではほとんどプレーしてない状態で、ヨーロッパサッカーの戦術を覚えます。
すると代表に呼ばれたときどうなるかというと、全く合わないのです。
ブラジルサッカー(南米サッカー)は大まかに言うと、個人の判断から組織としての戦術が作られます。(組織から個人のヨーロッパとは反対、ちなみにどちらが良いかは問題ではありません)
ブラジルには選手間の共通理解などの独自の細かいしきたりみたいなものがあります。
それがブラジル人が初めての選手同士でもすぐ合わせられることの要因でもあります。
それが才能ある選手が1度も本格的なブラジルサッカーに触れることなく海外へ行ってしまうと、そういったものが身につきません。
ロナウドもブラジル代表ではチームメイトと合わないといっています。(彼も17歳くらいで移籍)
昔のブラジル人はWカップなどで名前を売ってからの即戦力としての移籍がほとんどだったので、ほとんどの選手がヨーロッパにいてもすぐ代表で合わせられたのです。
今のブラジル代表の何をやりたいのかさっぱりよくわからないないサッカー(南米スタイルかヨーロッパスタイルかもはっきりしない)は選手が肝心のブラジルサッカーを身につけていないことが原因ではないでしょうか。
(それと各選手のサッカースタイルがバラバラなのでチームとしての方向性が一定しないこともあります)
ヨーロッパに早期に移籍させることは、もちろんメリットもありますが、その国のサッカースタイルに染まってしまうということも覚悟しなければならないでしょう。
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