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某新聞に掲載されたクライフの批評です。
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日本は、試合の結果と選手達の集中力に満足しているのではないだろうかと思う。しかし、代表チームのプレーは決して良いものではなかった。
二つの問題点がある。
一つは、ボールを支配し続けられなかったこと。もう一つは、ベルギーのゴールを脅かす状況をつくれなかったことだ。
後半14分に鈴木が同点ゴールを決めるまで、日本はまともにシュートを打てなかった。最初のシュートが得点にむすびつくことはあまりない。ましてや、稲本が放った2点目のシュートも得点になるということは本来ならありえない。
欧州チームが日本の得点に結びつくような守備面での過ちを犯す可能性は極めて少ない。
日本の最も重大な問題は、ボールの支配力がないことだ。敵陣にボールを早く送ろうと焦っているように見えた。せっかく手にしてボールもロングパスをすれば、相手守備陣に奪われてしまう。
小野や中田英は中盤でボールを受けたとき、近くにいる選手にパスして敵陣に入っていこうとせず、いきなり敵陣深く長いボールをけりこんでいた。
ベルギー守備陣にとっては中盤から孤立した鈴木と柳沢のFW2人をマークすればよかった。なぜなら、彼らの背後から不意に飛び込んでくる選手が誰もいないのだから。日本の戦術は完全に読まれていた。ベルギーは非常に楽な戦いをしたのではないか。
ただ、日本は先制された後、すぐに同点に追いついた。そしてそのことが、ベルギーの守備陣形を崩し、日本は一気に攻めに出た。日本は走る事に関してはベルギーをしのいでいた。しかし、走っているわりにはボールは動いていかった。ボールというのは素早い、正確なパス回しが可能になって初めて動くものなのだ。
それでも、W杯初戦はトルシエ監督のチームが決勝トーナメントまで進める力を示した試合だと思う。スタジアムを埋め尽くし、日本選手を勇気づけたサポーターに、選手達は一生懸命さ以上の何かを与えなければならない。それが次のロシア戦で試される。
日本のサッカー界に最初の勝利が訪れることを私は確信している。
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