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でも、彼が「結局は現実に立ち返る監督」であると思い直した今はもうそんな事は言いません。彼の思想の根底に流れるのは現実主義。「理想に折り合いをつける」、「理想と心中するほどの度胸はないし、そこまで頭の悪くない、無鉄砲ではない」監督である、と言いなおしましょう。
これは、彼を貶めている訳ではまったくない。今までと違った方向で評価しなおしただけのつもりです。彼の言霊をそのまま「チームの完成形を暗示するもの」と捉えることを止め、実際のチーム作りのプロセス、僕の場合は一つ一つの試合ですが、それだけを見て判断するに、結局のところ彼は、「弱いチームに対しては攻め、強いチームに対しては守る、という至極当たり前の、常識的なことをやろうとしている」と結論づけるに至りました。
故に、僕はgliderさんの紹介して下さった「トップ5に対しても中村・本山を」発言、まったく信用してません。リップサービスだとすら思ってます。そう言わないと今までとの発言の整合性が取れないから言ったに過ぎない、とすら。本山・中村といった選手が、彼ら自身の主にフィジカルコンタクトでの成長なしに、「戦術面での整備」だけで「強豪国に対しても使えるようになる」ことは有り得ない。フランス・スペイン相手に本山・中村が起用できないのは戦術上の問題点よりも彼ら個人の問題の方が大きいと思います。
さらに、秋田、上村の招集は「バックアップ」などではないと思います。バックアップ「探し」なら2年間の「ラボ」を通じてもう終わっているはずだし、そうでなくては困ります。「今更バックアップ候補を探さなくてはならないとは、今まで貴方は何をしていたの?」ということになります。トルシエ自身もイサイズインタビューで「ラボをもうする訳にはいかない」としているように、「バックアップ」ではなく、彼らの新しい個性、今までのチームになかった個性、「トルシエが不必要だとしていた」、否、「そう読み違えていた」個性が必要になってきた。ぼくはそう解釈してます。
で、ここからやっとレスになる訳ですが(笑)。
>で、このシチュエーション、まだちょっとわからないんですけど・・・
「後方からの精度の高いパス供給」とは、どういったケースを指すのでしょう?
相手3列目にプレスが掛からず、相手SBや下がり目のボランチからミドルパスでサイドのスペースに放り込まれ、組み立てられるケースです。相手SBとは言っても、欧州の一線級のチームのSBなら、ノープレッシャーで簡単にルックアップさせてしまえばかなり精度の高いフィードが出てくる。リザラズ、テュラムを出すまでもなく。3ボランチ1トップでプレッシャーが掛からないとは思いませんが、しかし2トップに比べプレッシャーが掛かりやすいかと言えばそうではない。そして、2トップで行くことが出来なかった理由もない。高原が負傷したら西澤のワントップにしかなれない訳でもない。柳沢がいるし、久保がいる。「ポゼッションサッカーを追求するのならば」2トップで相手3列目に対してさえもアグレッシヴにプレスを掛けに行くべきで、3ボランチにして中盤で待ち構えるのはあまり得策とは思えないです。「ポゼッションサッカーを追求するのならば」、ね。
ですが、3ボランチで(2トップと比較して)前線からあまりプレスを掛けに行かず、中盤と最終ラインの距離をコンパクトにし、「中盤での主導権を相手に渡す代りに」「中盤守備を密にし、奪った後素早い攻守の切り替えでカウンターを狙う」のであれば、あの3ボランチにも納得がいきます。「中盤での組み立ての主導権争い、その優位性を求めるため」というのは、あくまで副次的な要素であると思いますし、3ボランチの日本が主導権を握る時間が続けばトルシエはFWを一枚投入して2トップに戻すでしょう。クロスボールに対して飛び込む人間が例えば西澤・ヒデ・稲本であるよりは、西澤・高原・ヒデ・稲本とした方が得点率は高いと思いますし、初期の位置設定がミッドフィールドである選手よりは専門のFWが飛び込む方がクロスの対費用効果は高いと思います。勿論、稲本だって飛び込む訳ですがね。
ただ、そのときは、おそらく相手チームは「押し込まれている」のではなく何らかの理由、「リードして残り時間が少ない」や「退場者が出た」などの理由、さらには「こうすれば日本は攻め手がない」などの理由で「引いている」のであろう、と思います。実際、コンフェデ開幕戦・前半のカナダ、コンフェデ決勝・後半のフランスはそうでした。ついでにいえば、サンドゥニで2点リードした後のフランスもそうでした。「強力なFWが居ない日本の攻撃力なら、引いてスペースを与えなければ凌げるし、バックラインが浅いから簡単に裏を取れる」ということでしょう。
そして僕は疑問なのですが、こういった強豪国に相対するときに「相手よりボール落下点に先に到着することを志向する」ディフェンスがどの程度実現するものなんでしょうね?否、「実現した」んでしょうかね?僕には、ディフェンスが先にボールに到達するようなポジショニングを取っているシチュエーションで、日本の思惑通りに次々とインターセプトが起こるようなシーンなんてある程度以上の国々に対してはそんなに現出するものではないと思いますし、そんなシーンが多く見られた試合なんて思い浮かばない。中田浩二が、松田が、森岡が、どの程度「相手より先にボール落下地点に到達」してますかね?僕のこの辺りはイメージ論に過ぎないのでここは純然たる「疑問」なのですが。結局は先に相手にボールに触られ、アウトサイドとの連携で守るか、ディレイを掛けきれずに突破されてクロスを上げられているような気がするのですが?上記に挙げた三名に出来て秋田や上村に出来ないことは「精度の高いフィード能力」と「アウトサイドを追い越して前線に駆け上がってクロスを上げる能力」であり、「相手より先にボールに追いつく能力」だとは思えないんです。その能力で秋田や上村が別段彼らに劣っているとは思えない。というより、中田浩二・松田・森岡がその面で「秀でている」とは思えない。gliderさんおっしゃる通り、そういう能力を求めるなら波戸を3バックに起用すべきでしょう。現状では、その能力は服部を除けば「どんぐりの背比べ」と思います。
故に、僕は秋田・上村の起用の理由を「相手に先に触られた後」に求めます。
これは、相手国との力関係・ボールがどの位置にあるかによって勿論変わってくる話であり、これを掲示板の上でやると膨大なシチュエーションを想定せねばならず正直しち面倒くさいので端折らせていただきたいのですが(笑)、「高い位置にラインを設定している」状態で、中盤で相手1対日本2からの単独突破や1対1で競り負ける場面が多く現出すれば、当然最終ラインに負担は掛かってくるし、ボールサイドに3バックが張り出してマンマーキングにあたるシーンは多くなる。それを無くそうと5バック気味に引いて、サイドのスペースマーキングをアウトサイドに任せれば確かに守備は安定する、が今度は攻め手がなくなる。日本はいま、そういうジレンマに陥っていると思います。
だからこそ、秋田や上村を呼んだのだと思います。「現状のメンバーではああならざるを得ないから、1対1でボールを奪取できる個性が欲しい」と。それは、トルシエの3バックへの回帰願望に他ならない。5バックを「望んでいる」訳では勿論ない。願わくば、相手のサイドアタッカーが局面的に一人なら、こちらも一人で応対し、ボール奪取に成功したい。勿論、フラット3をこなす上で最低限必要なラインディフェンスへの対応力、集中力、最低限前線にミスなくボールを供給できる能力の土台の上に。それが可能であれば、攻守の切り替えは目覚しく早くなるし、ボールポゼッションは高くなる。守備に割く人数が少なくなれば、必然的に前線に残る人数も増える。アウトサイドに守備の負担を掛け過ぎる現況が「問題である」とトルシエが感じていればこういった考えは当然選択肢の内に入るでしょうし、そうでなくては少々心許ないです。
さらに、アレックス。小野よりも縦のスピードに優れ、一人でボールを縦に運べるアレックスが入ることで、アウトサイドの位置を修正することがよりスピーディに出来る。恒常的に前に位置しやすくなる。そう考え、最終的に日本の3バック及びアウトサイドはこんな形で落ち着くのではないか、と思います。そうならなければ、「この方が良いのではないか?」と提案させていただくことになるのですが…
アレックス 波戸
戸田 明神
服部 森岡 秋田
どうでしょう?何か可能性ありそうじゃないですか?
いま僕は「弱い国と当たる場合」を想定してはいないです。「日本がボールポゼッションで相手を恒常的に下回るような試合展開」を考え、またそれが「W杯本番で現出する可能性は高い」と思い、「しかしどうにかして攻め手が欲しい」と思うが故のこと。日本がボールを支配する局面ではアレックスよりも小野の方が良い。そこはgliderさんと一致しています。
とまあ、僕はあいかーらずネガティブで、悲観主義で、あんまり「盛り上げる」方向には向いていないです。性質的に、みんなで盛り上がっていこうとかいうノリよりは、ボソッと毒を吐くポジションのが合ってるんで(笑)。だから、本来的にgliderさんの論調が主流にならないとまずいし(笑)、かといって行き過ぎた楽観論がgliderさんの論調に乗じて幅を利かせるのも面白くないんで、まあW杯が終わるまではトルシエ懐疑派を貫きます。
その上で。誠実にレスを返して下さったgliderさんに改めて感謝と敬意。ありがとうございます。
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