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来年の6月に、中村や本山が実際に使えるようになっているかどうかは、彼等の努力とチームとしての
戦術的側面の両方があるでしょう。彼等の主にフィジカル・コンタクトでの成長なしには攻撃面でも難しい、
とぼくは思う。でもトルシエが言わんとしているのはそういうことじゃない。
彼はチーム対チームの力関係のことを言っているのです。
これから1年、それを目標にチームを作る、と宣言しているのです。
そしてそのことに偽りがないのは、チーム自身がやっていることを見ればあきらかです。
「弱いチームに対しては攻め、強いチームに対しては守る、という至極当たり前の、常識的なことをやろうとしている」
と結論づけるに至る、のはコンフェデとキリンカップを無視せねばできないことです。
そしていくら相手が弱かろうが、そういうふうに練習試合を無駄にしたことはこのチームは一度もないし、
トルシエが戦う前からカメルーンやパラグアイを弱いと踏んでいたわけでもないし、それでも試合前の
指示や選手の構成を見れば方向性ははっきりしてくるし、実際の戦いぶりからしても試合に持ち込まれた
テーマを見ても、トルシエの宣言に偽りがなかったことはあきらかでしょう。
秋田と上村の召集も、ぼくはトルシエが今まで不必要だとしてきた個性を必要としたからだとは思いません。
「バックアップ探し」も「ラボ」などではなく、2002年の本番までずっと続くのは当然。
森岡、松田、中田、服部、といった「半ば確定的」な選手に、もうひとりふたりの「バックアップ」や
「競争相手」を探すのはこれまでのやり方を見ても、トルシエ自身のインタヴュー、ジャケのインタヴューから
推察される緑龍さん言うところの「メトード・フランセーズ」からも必然的に続く。
「高さ」と「強さ」のあるバックスとして、中沢の召集となんらの変わる所はないだろうし、
それが足りなく、「強いキャプテンシー」というアピールポイントをA代表においてはもうひとつ発揮できない
宮本が遅れをとっている今、そういう意味でも秋田にはその面でもなんらかの効果が期待できるかもしれない、
との意味からの召集という側面もあるだろうし、第一、彼等の召集がkindさんの言うような意味を含むものならば、
相手が強かろうが弱かろうが、その守備システムに変化がなくてはならない。
しかし実際には、そんな変更点はまったくないし、それどころかこれまでのやり方を強化するような方向性で来ている。
申し訳ないが、秋田上村の召集に関するkindさんの見方は根拠に乏しく少々客観性、論理性に欠けるように思えます。
彼等は単に「開かれた10%の窓」として呼ばれたにすぎない。それは別に「ラボ」とは関係ないでしょう。
> 相手3列目にプレスが掛からず、相手SBや下がり目のボランチからミドルパスでサイドのスペースに放り込まれ、組み立てられるケースです。
そういうケースでピンチになっているのは、数少ないと記憶しています。
サイドに出されてそこをフリーで使われるのは、比較的高い位置の中央で素早く繋がれたり、ドリブルされたり、
そこにコンセントレートさせられてサイドが空いてしまうケース、そういう時に数多くピンチになっています。
3列目にあまりにプレッシャーがかからないと、その前の相手に良い状況でボールを持たれ、
結果的にエリアポゼッションの面で損をすることになりますが、所詮相手3列目のところで
それほどボールがとれるわけじゃなし、2トップ1トップ下、あるいは1トップ2トップ下という形の
本来的意義はやはり攻撃面でしょう。
そして、相手によってプレッシングラインの設定を変えたからと言って、ボール奪取の位置設定を少し下げたからと言って
ポゼッション・サッカーでなくなるわけではありません。それは設定変更、というだけ。
そして何度も言っているように、「3ボランチ」は「3ボランチ」じゃありません。3人仲良く並んで後方にいたわけじゃありません。
サンドニでも、少なくともトルシエが3人並んで後方で守備をすることを意図してああいう配置をしたわけではないし、
「3ボランチ」ではなく、「攻守にバランスのとれた/とることができる活動範囲の広い選手」を
中盤に配したというだけです。「ポゼッションサッカーを追求すればこそ」の布陣でしょう。
その布陣で日本が主導権を握る時間が続けば、名波や伊東が上がってトップ下の位置でプレイする時間がずっと続けば、
どちらかを下げてFWを投入するかもしれませんが、それも試合の状況次第でしょう。
また、最終ラインの裏に対して放り込まれたロングボールに対して、「相手よりボール落下点に先に到着することを志向する」
ディフェンスは、今のところほぼ機能しています。それを、走ってくる相手、受けようとするFWに対するマンマークに
変えれば、「守備の主体性」が失われ、ことはそういうケースに留まらず、システム全体に影響し、
チーム戦術全体に悪影響を及ぼすでしょう。ゾーンバランス、速い攻守切り換え、ポゼッションサッカー、
ボールオリエンテッド・ディフェンス、オートマティスム、そういうこれまでやってきた総べてを壊すでしょう。
もう今さら後戻りはできないのですよ、はっきり言って。
サイドに出されたロングボールに対しては今のところ、そういう守り方をしてはいません。
サイドハーフか、DHが行ってディレイをかけるか、サイドのバックスが行ってディレイかけるか
しているだけですね。そこに秋田を配しても、スピードある相手のウィングやFWに対して有効かと問われれば、
ぼくはやっぱり否だと思うし、文字どおりの「3DH」にして行かせればなんとかなるかと言われれば、
それはkindさんおっしゃるように、またぼくもそう思うのですが、それは根本的なコンセプトの放棄で、
やっぱりそんなことをするはずもできるはずもないのです、今さら。
だからぼくは、そういうボールに対してもバックスに「もっと速く行け」と言いたいし、
中に対するロングボールと同じように守らなきゃダメだと思うわけです。
そうしない今が、矛盾なんです。
そしてそうするために、稲本や明神に「全方向視界」を望んできたし、そういった面や後方へのカヴァーリングにも
優れた能力を発揮する戸田の加入を喜ぶし、トルシエがその戸田を「かかせない選手」と言うのであれば、
そういったことがその視野にないわけじゃないんだなとも思うし、キリンカップにおいて服部でなく中田を先発
させている理由のひとつもそこにあるだろうし、羽戸の起用も「5バック」のみならず「仮の4バック」のSBとして
そういった面のこともあると思うし、SH、DH、そしてCBの間のコンビネーションの高次元での確立と守備の状況による
流動性、応用力、切り換えの速さ、そういったことをこれからに期待しているのです。
そういった面では、秋田や上村は今の3人にやはり劣るとぼくは思います。
彼等が召集されるのは、セットプレーやロングクロス、センタリングでの高さと強さといった面で理解はできますが、
そういう選手をひとり置いておくことで、失点確率の高いそういったシーンをしのげる
ことは多いでしょうが、
ぼくはやはり、反対ですね。
いずれにしても秋田や上村がサイドで受けた相手のFWやウィングに対し、どっこらしょとばかりに
遅いタイミングで対処しに行っても、スピードもスキルもある強豪のそういった選手からボールが取れるとは思えない。
例えそういうシーンになっちゃっても、秋田や上村がその面で服部や松田に勝るとも思えない。
どのみち相手が受ける時にもっとプレッシャーをかけられないと、結局は後手後手になってズルズル下がることになるし、
言ったようにその他のシテゥエーションでの守り方と矛盾しています。
だから、そこをDHだけでなく、SHが戻ったり引いて構えたりするばかりではなく、CBも早い判断で行けないとダメ。
DFには高さも求めるトルシエは絶対やらないでしょうが、だからぼくは右のバックに奈良橋や中西だって良いのです。
悪いけど、上村はもう勘弁して下さい(笑)。
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