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▼GAITIさん:
どうも、遅くなりまして。
前置きはおいといて、さっそく行きますね。
>アルゴ・サッキとミラン
アリーゴ・サッキ です(笑)
茶々はさておき、まずは74年西ドイツ大会のオランダですか。
>簡単に言うと、相手がボールを持ったら近くにいる味方全員で大量の人数をかけて
>ボールを取ってしまうプレスです。
>日本でも加茂監督がゾーンプレスといってやったアノ方法です。
あのオランダは、ゾーンプレスではありませんよ。
ゾーンディフェンスの概念は50年代からありますが、あのオランダは担当ポジションからのマーク、ということをやっていただけでゾーンの受け渡しとかゾーンからのプレスとかを明確にやっていたのではありません。
今、見てみるとポジションチェンジといってもクライフ以外はそれほど好きに動き回っていたわけでもなく、「全員攻撃全員守備」と言われたのは後方選手の頻繁なオーバーラップと前方選手のそのカバー、前線の選手もよく守備したこと等から。
それも、当時のサッカーでは全員が常に激しくプレスに参加していたりするわけでもないし、「ローテーション」の考え方から、それほど運動量が相手に比べて多いってわけでもありません。
あのオランダが強かったのは、実は守備がしっかりしていたからでもあり、素早い寄せと効率的なカバーによってスムースに攻撃に移り、なおかつDFも含めてスキルが高かったから。
斬新に感じるのは、当然でしょう。
決勝戦のミュラーとクライフ(ニースケンスでもいいけど)の動きを比べたら、そりゃ、ね。
ま、ともかく「かなりでたらめに動き、効率が悪い面もあり、スタミナが必要」ってのは誤解です。
次はサッキですか。
>プレス方法は実はクライフのころとあまり変わらなかったのではと思っています。
そりゃあサッキが可哀想だ(笑)
守備者がどうボールホルダーにプレッシャーをかけ、どうフォローに入るか、といった個々の部分ではたいして差はないでしょう。
それはいまだに。
ただ、サッキの「ゾーンプレス」が斬新で世界を席巻したのはそうではなくて、ピッチ全体に明確に3ラインを引き、それをできるだけコンパクトにし、ボールに対してゾーンを移動し、そのボールの位置によってライン上の誰がプレスに行くか、奪ったなら誰が前に上がって受けて攻撃を開始するかも基本的には約束事として決められていたこと等からです。
そしてGAITIさんにしてもそうなのですが、「ゾーンプレス」ということに対する大いなる誤解がこの国にはありますね。
その最大のものは「プレス」を「囲い込み」と同義にしている所です。
今、ぼくの手元には当時のミランの映像はなくて、サッキ戦術を確認できるのはサッキ・アズーリのものに限られるのですが、彼等は最初から「囲い込み」になどは行っていません。
うちには90年くらいのACミランのトレーニング本があって、その「戦術」の項に「ゾーンプレス」についての記述もありますが、「ホルダーに対して3人で囲みに行く」などという記述はありません。
そして94年アメリカ大会のアズーリにしてもそんなことはやっていません。
「相手ボールになった時に、ただちにコンパクトな3ラインを作ることによってボールに対し網の目を張っている状態(つまり囲んでいる状態)を作り、同時にレシーバーに対してもその動きを規制することによってパスの出しどころさえもなくしてしまう」
というのがその基本的方法で、実際にホルダーに対して「3人で囲む」というのは単に「寄せが遅れた」ってだけの話。
よくは知らないんですが、加茂さんがほんとうに「3人で囲め」と命じていたなら、それは何か勘違いしたと言うしかないでしょう。
4人しかいない中盤で3人をひとりに対して同時に行かせてもし間に合わなかったらどうなるかはバカでもわかるし、2人で同時に行ったら奪える確率は低くなりますね。
正しくは早いタイミングで1stプレッシャーをかけ、フォローの選手が限定されたコースで奪う、という方法。
さらに良いのは1stプレスの選手がパスコースを読み、インターセプトもしくは受ける瞬間にプレッシャーをかけること。
もちろん、一発でかわされないボディシェイプを持って、です。
サッキの「ゾーンプレス」でもそれは同じで、ボールとレシーバーの位置によって誰が行くかは明確な取り決めがありました。
それもこれも「3ラインのゾーン」をはっきりと作ることによってなし得たことです。
現代では、そうして「戻ってゾーンを作る」ヒマは与えられなくなりました。
だから攻撃時でも「選手がどう入れ代わっていようとゾーンバランスを保つ」ことが重要になったのです。
それができないチームはもう「組織的」ですらないのです。
だから、ミツさんの言うように、
>>その間にゾーンを再形成する
>>という方法が良いのではと思っています
>これをして遅い、と言う
のです。
再形成しなければならないようでは「組織が崩れている」のです。
「オートマティズムがない」のです。
そしてサッキの時代とは異なり、その「ゾーンの形成」も位置、形状とも「チームの初期設定」などは無意味なもので、サッキの時代に無理にあてはめて言うならば「ボールに対して収縮し」「1stプレッシャーがかかる状態」から始まっているのです。
初期状態が「ボールに対しゾーンを収縮し1stプレッシャーに行く選手がもうスタートしている状態」です。
だから、ゾーンの形状も、どの選手がどのゾーンにいるか、もそれは「流れ次第」であり、誰がどこで中盤が2ー4だとか3ー3だとかは語る意味がまったくないのです。
そういう流動的な時間軸で考えねば、意味を為さなくなったのです。
それが「スピードが上がった」ということです。
だから、早ければ早いほど強い。
そのはやさを可能にする「チームの完成度」と相まって。
リッピにしろ、カペッロにしろ、そういうスピードの中でやっているので、サッキの戦術は「プレス」ということではベースとはなり得ますが、当時のものを当てはめたってダメ。
それはもう「古き良き時代の優雅なテンポのもの」になってしまったのです。
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