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▼gliderさん:
gliderさんが感じておられるA代表への不満、
Wユース代表への思い、感覚的にはわかったつもりです。
以前にチャットでも少しお話しましたが、
ガンバ大阪ユースをぜひ一度ご覧になってください。
試合前に渡されるメンバー表にはDF3枚、MF3枚、FW2枚と書かれており、
いちおう表記上は「3−5−2」ということになるんでしょうが、
試合中にその形のままプレーしたシーンなんて思いつかないです。
とにかく、中盤のポジションチェンジがめまぐるしい。
左サイドの選手が中に切れこんでいってDFを引き付けて、
空いたスペースにトップ下が走りこんでボールを受ける、
なんてシーンは当たり前。
たとえば、2トップの片割れがボールキープして下がってきて中央にスペースを作り、
そこにボランチの選手が走りこんでボールを受ける。
いったんボールがサイドに展開されると、
ボランチの選手はそのままFWとしてプレーを続け、
さきほど下がっていったFWはボランチの位置でこぼれだまを狙うポジションにいる。
そして、その状況でサイドの選手がボールを奪われたら、
ファーストプレスを掛けに行くのはその「もとFW」(笑)。
11番のポストプレーヤー羽畑だけはトップに残っていましたが、
あとの中盤の選手はクルクルポジションを変えながら、
ゾーンバランスの崩れを直ちに補正するようなポジショニングをとりつづけます。
全員がそういう意識を持つことで、自然各選手のポジションは近くなり、
サポートが早くなり、攻守の切り替えが早くなる。
こういうサッカー、’99ワールドユース以来ちょっとお目に掛かったことないですね。
また、このサッカーを完遂させるためには、自由自在に
ボランチがサポートに入ったり、2人になったりしながらも
フラットをきちんとキープするディフェンスラインが不可欠です。
前はいくらめまぐるしく動いてもいいのですが、
後ろは逆にきちんと「面」になっていないと、ゾーンバランスが崩れる。
コンパクトでなくなる。相手がボールを動かすことを不自由と感じなくなる。
すなわちプレスがきかなくなる。
G大阪ユースのディフェンスラインは、ペナルティエリアに近づくほど
フラットラインを徐々に形成してゆき、ペナルティアークに踵がつく頃には
完全にフラットになっています。
まず、ゴール前にきちんとフラットラインをつくることによって、
相手FWにペナルティエリアでポジションをとらせることが少なくなり、
エリア内からのシュートを減らすことが出来る。
実際、ガンバユースと対戦した相手のシュートのほとんどは
エリア外からのものでした。
また、フラットをきちんと保つということは、オフサイドラインを自分たちの手で設定する、ということ。
相手の動きに引っ張られるのではなく、「こちらの動きに相手FWが合わせなくてはならない」状況を作ること。
ガンバユースは、それが出来ていました。
これによって相手FWに自由に動くことを禁じるとともに、
「そこには出せない」という心理的プレッシャーをボールホルダーに掛けられ、
またボールが下がった瞬間ただちにラインを上げることでゾーンバランスを是正できる。
もちろん、こういう「主導権を握ったディフェンス」は、プレスの掛け方の技術、
奪い返した直後に速攻を掛けられるゾーンバランス、それを可能にする共通意識、
ベースとなるテクニックが不可欠です。
そして、もうひとつ重要なのは、彼らは「ラインを保ちながらマンマークしていた」こと。
よく勘違いされがちなのは、「ラインディフェンスでは人を捕まえていない」ということ。
ぼくも最近まで思っていたんですが、どうもそうじゃないんですね。
要は、相手にオフサイドラインを意識させることと、マンマークを同時にこなせばいいわけです。
「ここまでいったらオフサイドになるぞ」という「オフサイドゾーン」をきっちり刷り込みながら、
ラインをキープし、受け渡して相手を見ながら、ボールホルダーが前を向いた瞬間に
置き去りにしパスコースを一瞬で消す。
相手FWは自由に動けない。ディフェンスラインは、人につきながらラインをフラットにし、
絞り上げるように位置を高く取り、プレーゾーンをどんどん狭めてくるから。
片時も状況把握を怠ることなく、つねにFWに有形(人)無形(オフサイド)の
プレッシャーを与えてくるから。
結果的に、むしろ「相手FWがディフェンスをマンマークしている」、ということになる。
これが、「ラインを保ちながらマンマークしているディフェンスライン」の図ですね。
これで、ラインディフェンスの弱点とされてきた「一発で裏に抜け出される」ことも
少なくなります。ラインがFWのポジショニングをきちんと把握(統制)していて、
誰かが必ず行けるポジションにいる。
オフサイドにならなかったからといって手を挙げっぱなしで
戻ってこない訳でもないので、相手FWが少しでも手数を掛ければ
ディフェンスはFWにプレッシャーを掛けられる位置にいる。
オフサイドトラップに失敗しても、
相手FWが必ずGKと一対一になれるわけではない。
これは、森岡の「早いブレイク」とは似て非なるものだと思いました。
森岡の「ブレイク」は単にラインを精密にコントロールできないから
相手FWを制御できないだけ、と思うのです。
ラインは、ブレイクしないことが理想。
ブレイクするということは、相手に主導権を渡すということ。
状況に応じてブレイクできなければ柔軟とはいえませんが、
多すぎる「ブレイク」を「柔軟」と解釈する前に、「ラインを保てなかったのはなぜか」
という見地から解釈を試みるのも面白いかもしれません。
ともあれ、ガンバユースに、「洗練されたラインディフェンスの威力」を
見せ付けられました。
もっとも、こういうサッカーが、A代表で出来るようになる為には、
まずは相手国より技術レベルで大きく上回る必要があるかも知れないですね。
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