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gliderはんは、このような趣旨の発言をされています。稲本には前方120度の視野しかない。「ボランチ」の稲本のせいで、フラット3は自由度を失い、サイドは孤立している。はっきり言って「ボランチ」として稲本は子供だ。あんなに気が効かないボランチは見るに耐えかねる。故に、稲本が中心(ボランチ)になるチームは未熟だ。
そこで、私はその「事実」を確認すべく、彼が中心となって活躍したシドニー五輪代表チームの試合を見ることにしました。
現在は、シドニー五輪壮行試合・日本対クウェート戦を確認しています。そして気づいたこと。
まず長所から。
局面での1対1では相手に勝っている。前方へ思い切りのよい迫力のあるランニングをしている。(自分の視野の)前方で相手ボールを捕らえ、奪取し、そこから攻撃の流れを作っている。中央からの攻撃の中心になっている。ワンタッチやツータッチで、ワイドに、かつシンプルに攻撃の起点になっている。クリエイティブなパスをだせる。素晴らしいひらめきを持っています。稲本から攻撃がはじまったり、フィニッシュまでいったりすることはよくあります。稲本が相手陣内でボールに絡むとチャンスが生まれている。体の向きが前方気味で、自分の視野にボールが入ると猟犬のごとく飛び込む、すごい迫力で。相手のいない前方のスペースへ走りこむのがすごい上手い。前でプレイしている時の稲本は何かを起こしそうでワクワクする。期待感が募るし、ダイナミックで最高。トルシエサッカーのやりたいことや、ペース掴みや、攻撃における大きなカギを握っていることを感じる働きです。まるで、中盤のリベロかFWのよう。かなりの自由人。フリーマン。
続いて目についた短所。
左で俊輔が走り回って守備をしている中、稲本はただそれを見つめている。自陣にボールがきた時に歩いているシーンが多い。自陣にきた時に、どのような状況でも周りを気にしない。自陣にきた時に、積極的な守備におけるポジショニングをとろうとしない。ただ、ポツンとそこにたたずんでいる。自陣では、周りとの距離もほぼ無視。自陣で、ひたすらボーっとたたずんでいる。
自陣では、俊輔がボランチのように見えるほど、守備では、稲本は何もしてない。明神が一人で真中の守備をしている。自陣では、積極的にボールを取りにいかない。自陣では、左サイドのケア−を全くしない(たまに左をケア−するが、ほとんどしない)。自陣では、とにかくひたすら歩いている。自陣では、本当に驚くほど何もしない。3バックはラインを上げられないでいる。
相手が西のサイドから攻めてきて、3バックがずるずる下がっていく中、相変わらず稲本がジョギングをしながら、後ろへ下がっていくと、なぜか変なところに俊輔がいる。そう、後方のボランチの位置にいる。俊輔がディフェンダーの位置でボール奪う。しかも左サイドではなく、ディフェンスの真中で。次の瞬間。稲本は、俊輔が飛び出す前方のスペースにいる。そして稲本にボールが渡るが、相手にボールを奪われる。
まるで、俊輔がボランチで、稲本が左ハーフのようである。これがポジションチェンジということで、好意的にとらえることもできるが、それがずーっと続く。一向に、その位置が逆になることがない。俊輔がどんなに後方に下がってきても、稲本はただひたすらそれをポツンと見つめている。攻撃に移る。稲本はジョギングをしている。ボールが動く。相手に奪われる。ボランチの位置に相手が入ってくる。
そのボールを、中田英が、走りこんで、追い込み、明神が読みを聞かせ、ボールを積極的に奪取。まるで、中田と明神のダブルボランチのようだ。稲本はただひたすらそれを見つめている。のそのそと前にいく。ゴール前。フリーでボールをもらってシュート。決定的シーンでシュートミス。いつの間に稲本はそこにいたんだと言われる。稲本はボランチの役割のなかで、攻撃のことだけを考えている。守備では、バランスをとるつもりで、そこから動かない。動かない。ただひたすら動かない。
ボールウォッチャーになって、自分のエリアからは動かない。自分のところで、じーっとボールを見ている。アクションは何ひとつ起こさない。カバーリングのカバーリングの位置にいたり、危険なエリアにも、選手を平気でいれる。気にしない。全く動じない。自分の位置以外は関係ない。ポツンとたたずむ。後ろの守備はかったるそうにしている。集中力が切れている。本当に退屈そうしている。異常なほど、歩いている。ポーッとしている。自分のエリアに入ってきてさえも、ポーッとしている。
ハッと気づいてプレスにいくが、後ろ向きとか、横向きで、攻撃につながりそうにないと、なんだかかったるそうにプレスをする。気を許す。たまーにしっかりとプレスをするが、90分ではほとんでしない。前半にちょっとするぐらい。
稲本は走りまわらない。走りながらリズムを作らない。そこにただデーンと構え、あとは何もしない。省エネの中で、自分の都合のよいプレイだけを必死でやる。できるだけ、動かずに。びっくりするほど、集中していないシーンが多い。自分にボールがこない時は知らん振り。どうでもいい。グランド上の観客か何かと間違える。審判のほうが動いている。
自分にボールがきそうな時でさえ、ポーッとしてる。準備不足は否めない。ロイ・キーンを見ていると、稲本がまるで、アマチュアのように感じる。体力のないサッカー上手なおっさんのよう。いい加減イライラしてくる。
まるで、前にいくことしか考えていないよう。自分のところにボールが来ると初めて動き出す。自分の視野の中(ゴールから見て前方120度)にボールが来るとはじめてタックルにいく。ボールを持つことで初めて稲本が生き生きと動きはじめる。ボールがないと、まるで死んでいるよう(ただし、前方120度にボールがあると強い)。前方視野にボールがないと稲本はいないも同然。
1人で死んでる。まるで、次の攻撃に備えているよう。体力温存のよう。他の人に比べてさぼりまくり。たまーにでてきて美味しいところを狙ってる。まるで中盤に潜むFWのよう。
皆さんはどんな風に判断しますか?稲本の長所をとりますか?それとも短所を気にしますか?他の選手を使いますか?ボランチが点をとる、ボランチから点をとることだけ意識しますか?前方でのボール奪取を最優先させて、他は妥協しますか?個人の力強さを優先させますか?それともボランチの守備と繋ぎをとりますか?チームの流れをとりますか?チームの総合力で勝負しますか?組織と個人のコンビネーションを最優先させますか?さあ、どうしましょうか?
稲本では守れない。しかし、稲本なら点を取れる。稲本では、チームの中で誰かが犠牲にならないといけない。しかし、稲本なら稲本自身の突出した個の強さを見ることができる。さあ、どうしますか?
稲本は、中盤の「フリーマン」です。中盤のリベロです。中盤のFWです。稲本は中盤での特別な存在です。稲本は特権を持っています。それはよくわかりました。中盤のフリーマンです。本当に自由人です。自由人ですからとっても気まぐれです。守備も平気でしません。その気になれば、突然、攻撃に自由に絡むこともできます。いきなりすごい形相で守備もします。
まるで、チームの動きとは関係なく、稲本スペースというのが存在していて、そこで稲本は自由に勝手にプレイしていいことになっているようです。稲本が中盤のリベロである所以は、まさに、稲本の好きかってにプレイしていいんだよってことですね。稲本の才能にまかせた、中盤のリベロ稲本にまかせているようです。周りは稲本の分までケア−をすることで補います。私には、そう見えました。稲本は稲本の「自由」にしていいようです。稲本は、自由にプレイすることしかできないようですし。
全ては稲本の自由です。自由ですから、何をしてもいいのです。突っ立ててもいいし、ジョギングしてもいいです。チームはそういった気まぐれに迷惑します。稲本の分は、皆でケア−します。その代わり、稲本は爆発的な長所もあり、それを自由の中で大いに発揮します。チームは稲本のそういった動きに助けられます。稲本は、ある意味中盤のリベロです。そして、それは他でもない、トルシエが与えたものです。稲本は外さない。ボランチには、稲本の長所が絶対に必要だと思っています。だから、短所は目をつぶります。そして自由を与えます。稲本は中盤のリベロです。稲本は中盤の王様です。
そんな選手だから、ワンボランチは厳しいです。3ボランチも同様に。自由を制限させられると、途端に稲本は萎縮します。稲本には自由を与えてあげてください。それが稲本を生かす道です。結果は出しますから。
自由の意味が違うと言われるとそれまでかもしれないですが・・・。
ところが、そんな稲本が、時に本物の中盤のリベロになったかもと思う時があります。守備で、縦・横・縦横無尽にすごいケア−をします。ものすごい集中力で。ものすごい気が利きます。絶対に気を抜きません。可能性はあるようです。しかし、そうすると、何故か、あまり攻撃へは絡まなくなります。判断も遅くなります。想像力がなくなります。今度は守備しかしなくなります。これもきっとリベロの自由でしょうけど。相手からボールを奪う。パスを出す。そこで終わります。何故か・・・。中盤のFWが、今度は、中盤のDFと化して絶対に他のことはしません。気難しいリベロです。
いつになったら、本物の中盤のリベロになるのでしょうか。
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