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名波は、リーダーたる選手です。
そのプレイで、「今やるべきこと」を明確に示すことができる選手だからです。
攻撃的な能力を評価されますが、実は守備面での貢献も常に高い。
ここぞという時の素早く的確なカバー、気迫あふれるタックル、激しいプレス。
アジアカップを思い起こしてみましょう。
誰が日本代表でボールを一番多く相手からもぎ取っていたか。
最も早く相手の攻撃の目を積み、こちらの攻撃の起点となっていたのは誰か。
最も広く、はやく動いていたのは誰か。
シドニーでは生き切れなかった中村を存分に生かし、日本の目覚ましい攻撃サッカーを構築したのは誰か。
「守備的ミッドフィルダー」等と言う意味ではなく、言葉本来の意味で「ボランチ」の称号を与えられるべきなのは名波です。
選手を印象で見てはいけません。
名波は、攻撃でも守備でも能力も貢献度も常に高い選手です。
その上で、チームの求心力足り得てもいます。
チームの進むべき方向を有言無言のうちに示すことができる「リーダー」なのです。
中村が孤立しかければパスを出し、フォローし、中に入れ、前へ出し、稲本が前へ出て行けば下がり、右サイドの明神と連係を計り、攻撃が停滞すれば今度は前線で組み立てる。
機を見て飛び出し、ゴールも狙う。
アジアカップの日本代表はまさに「名波のチーム」でした。
チームが力を発揮するためには、ひとりひとりの機能面、その機能の組み合わせによる全体のコンビネーションという面と、精神的な部分のバランスも重要です。
あらゆる意味で「ひとつ」になった時に真価を発揮するもの。
11人もの人間が集まってやっている以上、感情的な部分が小さいわけがないと思います。
何故か、その部分は多くの批評で見落とされがち、というよりも無視されているように思います。
チームを構成する時に能力面だけで選手を選ぶのは、明らかに片手落ちなのです。
試合の中で、皆が生きるように力を出せるようにしていた名波と、控え選手の中にいて明るいモティベーションをもたらした小野。
こういう二人がいたからこそ、アジアカップの日本代表はひとつにまとまり、優勝を果たしました。
こういう選手がいなかったシドニー五輪の日本代表は、1回戦で惜しくも敗れました。
それは「論理的」な結果であったとぼくは思います。
土壇場、修羅場で勝敗を分けるのは、そういう所なのです。
チームの機能的側面からも、まして人間的側面からはさらに、名波浩は、絶対的に必要な選手だとぼくは考えています。
一刻も早く万全な状態で復帰して欲しいものです。
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