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>しかし、フランスにズタズタにされた試合以後、トルシエは考えを改めた。前線からのプレスが機能しない場合、F3はそもそもフラットになれない。後方から精度の高いパスを供給され続ける相手に対しては当然ながらフラットには出来ず、裏へのスペースをケアしてブレイクせざるを得ない。要するに「ラインブレイクする」頻度が多くなる、もしくは「CBがサイドに張り出して対応しディレイ、同一アウトサイドもしくはボランチのフォローを待ち、中をCB二枚と逆アウトサイドで組む(この3人でフラットラインを形成する場合もある)」ことが多くなる。
なるほど、上のことは「フランス戦以降、トルシエが修正したこと」ではなく、kindさんの
「高い位置、良い位置でのボール奪取そのものが不可能・望み薄、となった場合日本はどういう布陣を組むべきか」
に関しての御意見だったわけですね?そうすべき、との。
「〜トルシエは考えを改めた」という部分でぼくは勘違いしたようです。
で、このシチュエーション、まだちょっとわからないんですけど・・・
「後方からの精度の高いパス供給」とは、どういったケースを指すのでしょう?
例えば、後方からのロングボール、あるいはアーリークロスのような場合には、
もちろんフラットではいられませんが、それは「ラインブレイク」というよりも、
着地点に相手よりも早く入るというだけのことだろうし、それは今までも変わりませんね。
そうではなく、例えばフランス戦でピレスにサイドを使われ、アンリがラインの間隙を
縫って裏へ抜け出してくるような場合、または後ろから飛び込まれて裏のスペースを
突かれてしまうような場合のことでしょうか?
でも、そのケースと上村、秋田の召集との関連の部分はぼくにはいまいちわかりません。
そうした場合でも、例え早めのブレイクをして裏のスペースを潰す、というような守り方
をするにしても、必要なのは相手FWとパスの合流点の正しい予測に基づく位置取りであり、
ひとりをスイーパー的に余らすにせよ、パサーはスイーパーよりも味方が有利な合流点
を狙ってくるわけですから、フィジカルの強い選手というよりはスピードのある選手、
そしてポジショニングによって「危険地域」を狭くできる選手、でしょう。
その意味でも、川口の起用は正しいと思いますし。
あるいは、CBがサイドに張り出してサイドを抜けてくる選手に対応するような場合のことなのでしょうか?
>「そういう場合5バック気味にして中央にF3を残す」とかそういった守り方では明らかに「駄目だ」という感想をもっているのですね。
それには賛成です。だからこそぼくは、その面では上村や秋田では後退だと思う、と書きました。
中盤で素早く回されてプレスがかかりきらず、サイドの深い位置で起点を作られてしまう
ような場合には、SHが戻ってきながら対応するのでは遅すぎる。
両サイドが最初から引ききっていたのでは攻撃ができない。
だから、左右のバックスには判断とスピードの速い選手を入れ、サイドに出た/出る、
「その時」にプレッシャーがかからなくてはダメだと思うのです。
SHは、あくまでもそのフォローで良いし、場合によってはDHと位置交換し、中へ絞って
守ることも必要でしょう。
最終ラインにだって流動性は必要、中盤との素早い連係が必要、ましてや本番でぶつかる
列強の速いサッカーに対応せんとするならば、ということです。
ただし、今のところトルシエはそういうふうに考えている節はない。
ぼくにしても上で書いたようなことを一朝一夕でできるとは思えないし、スペイン戦では
早晩に守備面での結果が求められたわけだし、それはピッチの上で選手達が作って行く部分にもかかわるし
ということもあるかもしれない。
トルシエは、全然別の方向、ぼくらが思ってるのとはまったく別の方向で考えているように思います。
彼は、戸田にファースト・プレッシャーをかけてまわることを命じています。
これはつまりは「5バック」は、「守りの時間」としての「オプション」だということ。
だから「世界のベスト5相手であっても、中村や本山をサイドに配せられるようになることが今後の課題」
というセリフがでてくる。トルシエは、別に3バックの両サイドの守りの不安(?)に対し、
恒常的に5バックを選択したわけではないのです。
相手がどこであろうと目標はあくまでも中盤支配であるし、中盤での激しいプレスに重点がおかれている。
強豪に対して、90分間それを続けられるということも難しいだろうから、全体的にフォーリング・ダウンして
5バック化して守るような時間帯も必要であろう、ということにすぎないと思う。
今はまだ、相手が強ければそういう時間が長くなってしまう。
そういう中でも抵抗の手段を持たなければならないから、低い位置から攻撃を組み立てられるようにも
しておかなければならない。で、キリンカップではそれも意識した。
攻撃と守りの試合状況の中でのペース配分や切り替えも意識した。
そういう流れの今でしょう。だから、ぼくにはトルシエが外を縦に崩すことの得意な選手を
望んでいるとはまったく思えないし、方向性が違っていると思う。
それはまるで、「低い位置からのカウンターが重要だから、FWには幡戸を」と言うことと大差ないように思えるのです。
>端的に言えば、僕は「秋田がトルシエの組織に、トルシエの要求通りの形でアジャストするなんて考えられない」んですね。
アジャストできなければもう呼ばれないでしょう、単純に。それだけのことだと思います。
一人の選手の能力を優先し、組織のあり方を今さら変えることなど、どんな監督でもやらない。
やるわけがない、と思いますね。それは非現実的で、トルシエの主義にも反する。
そんなことでフランス人は迷わない(笑)
秋田にも10%の門戸は開かれている、ということにすぎないであろうし、「ベテランの効用」
から、ケガの中沢の「代理を兼ねて」呼ばれただけ、と見るのが普通だと思う。
また、ぼくは秋田が単体としての強さにおいて森岡を大幅に上回るということもないと思います。
それといくら押されたにせよ、秋田が「秋田という単体だからこそ」守れるケースが組織で守るケースを大きく
その数において上回るということも考えにくい。そんなことで組織性を犠牲にはできない。
いつでも組織は遵守されねばならない、ということではありません。
組織性のためには、他は犠牲にされても仕方がない、と言っているのでもありません。
システムはあくまでも「利用される時に利用すべきもの」です。
でも、チームとしての「哲学」に矛盾をきたせば、チームは半ば崩壊します。
秋田もまた、「今ならばアジャストしうるかもしれない」と考えられたからこその召集でしょう。
ということから、kindさんの「秋田召集」に関しての特殊性は、論拠が希薄だと思われます(失礼)
想定されておられるケースの数的一般性も。いや、想定自体がまだよくわかってないんですが。
セットプレーやセンタリングに対する高さの優位、という面ではありえるかもしれませんが。
>「1トップ3ボランチ」が「2トップ2ボランチ」より「攻撃的に行くための布陣」であるとはとても考えられない。明らかに「まず守備、具体的には中盤での組織によるディレイありき」の布陣と考えます。トルシエは「前からプレスを掛けに行っても奪えないから中盤で」と考えたのでは。
そうです、「攻撃に行くための布陣」ではありません。
そういったつもりはありません。
目的はあくまでも「中盤での主導権をできるだけ握りたい」からです。
だからといって「前からプレスを掛けに行っても奪えないから中盤で」と考えたわけでもないと思います。
「サイド攻撃に対処するため」でもまったくないと思う。
実際に名波も伊東もサイド攻撃の対処に力をさいてたわけじゃないし。
サンドニでのフランス戦は、最初から守備的に戦おうとしていたわけではありません。
ボールの保持率が得点差ほどに差があったわけではないし、その保持率もただ後ろで回してたから
思ったよりは高い、ってわけでもない。
中盤での主導権争いにガップリと四つで挑もうとし、そこで脆くも破れたことが目論み違いだったわけで
強豪同士の試合に見られるような、火花散る中盤での主導権争いを日本がフランスと
演じることができる、と考えたのが目論み違いだったわけです。
それは今の時点ではまだまだでした、これからできるようにもう一度細部を詰めて、修正しつつ
強度を増し、そしてもっと「ファイト」できるように、再出発します、というのがトルシエの発言の意図であり、
スペイン戦以降の意図であり流れだということだと思います。
それに対してぼくは「はい、それは本を読んでみても試合を見てもよーくわかりました。
あと1年あるし、きっとできるようになると思っているからがんばって下さい。
でも、守備の仕方は他に工夫できる所もあると思うし、できたらそれはやって下さいね。
チームのスピードやクレバーさを、もっともっと高めていって下さいね。期待してます」
という感じなわけです。
サイドアタッカーについては、また別にもう少し書きます。
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