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書き忘れたことがあるんで、もう一つ。
トルシエ・ジャパンでは、オートマティスムが徹底されているということです。
スペースに動いて受ける、1タッチで出してまた動いて受ける、ウェーヴ等を使って動き、フリーで受ける、速く出す。
オフェンスに入った選手の動きはそれぞれ連動しながら、トルシエの言う「波」を作って行きます。
トレーニングでもそれは反復されています。
そういったオフザボールの動きを攻守の基本としてますよね。
それに囚われてはいけませんが、それをうまく使えば、そういった全員の「連動性」はやはり武器です。
(ただし、その「攻撃開始」のスィッチが「トップにボールを当てる」こと、ともすれば現在はそこに囚われすぎていて、
ポストの選手の状況や相手との関係に関わらず当てて奪われる、といったケースが見られること等の不満がある。
DFやMFと、FWとのより高いコンビネーション、ポストプレイの質を高めること、オフェンスに力をかける時間の共通意識の徹底、
そうした時の「スィッチ」に頼らないタイミングの共通意識と連動性を求めたい)
サイド攻撃も、そうやってコンビネーションを使いながら行っています。
本山は、そこにもクレバーさ、うまさを見せてもいますよね。「ウェーブ」も彼が一番うまいように思います。
ぼくが本山を一番の左サイドの適任者だと思うのは、そのスピードだけでなくそういう所に一番の理由があります。
小野はその面では、彼のダイレクトパスのセンスと精度はマッチします。
例にあげたユーゴ戦前半13分の場面などは、小野ならではのサイドの崩しだったと思いますね。
そして柳沢は、オフザボールの動きの鬼(笑)
そうやって、ひとりひとりがその個性を生かして役割分担しながら、うまくシステムを使いながら、
それぞれのやり方で工夫してどこでも突破して行けばいい。良いチーム、強いチームとはそういうもの。
ここまで2年半以上100人以上の選手を召集し、そういったことを刷り込み、要求してきた以上、
攻撃の「基本」をそこから変え、サイドハーフの個人突破に比重をかけるようなことは、やはりあり得ないでしょう。
余談ですが、もうひとつ思うのは「キックの精度、スピード、タイミング」です。
これまで、ピッチのスミを深く抉って長いセンタリングを上げてゴールになったシーンってありましたっけ?
トルシエになって、ユース、五輪、A、と3つの代表でかなりの得点シーンがありますけど、
いくら抉ることが少ないと言っても、アツも市川もいた中で、羽戸も入った中で、どれくらいの
そういったシーンがあったでしょう?
アツのアシストにしても、斜めの切れ込みからってのが多かったように思います。
長いクロスから得点になったのも、アーリークロスがドンピシャに入った時。
ワールドユースでの酒井、小笠原のアーリークロスや、五輪代表での一度ファーに振ったアーリークロスとか
みな抜群の精度とタイミングだったからゴールになったように思います。
せっかく抉っても、だいたいの所に上げてたんじゃたいして得点の匂いはしない。
たいして強くない日本の攻撃陣の空戦能力で、フランスのDFが揃ってる中におおよそで放り込んだって得点の匂いはしない。
せっかく抉って上げたけどゴール前には人が足りなかった、ってのもイライラします。
やっぱりタイミングの判断とキックの精度の方が大切だと思います。
戻ります。
トルシエは「時にシステムを破り、自分の判断で打開する大人」を望んでもいます。
「今はまだ日本代表にはクレイジーがいない」とも発言していますね。
オートマティスムとクレイジー。
システムは道具であり、うまく使えば強力な武器になります。
しかし、それにふりまわされてもしかたがない。
そこに高次元でのバランスが見られた時、日本代表は本当の強さを獲得できることでしょう。
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