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1、コーチとしてあるべき姿
フランスでは、指導者の心構えとして、「負けることを恐れずに、コンセプトを明確にもち、それを貫くこと」を強調しています。それは、子供たちの指導にとってどういう意味があるかというと、彼らの選手としてのピークを20代以降に持っていくために、各年代での勝利至上主義を排除して、一貫した指導体系の中で最高の選手を育成していくことを意味します。「勝つことだけにこだわる」ことは、「負けることを恐れる」指導者の姿勢によってもたらされるわけで、自分たちの中に一貫したコンセプトがあって、結果よりも、試合の内容を重視し、それ継続していく姿勢が、ひいては、代表の強化にもつながるわけです。ただ勝てばいいのではなく、「どのようにして勝つのか」が最も大切であることを絶対に忘れてはいけません。
2、選手の自主性(判断力)を育てる
サッカーにおいて最も大切なものに「判断」というファクターがあります。試合になれば、一つの選択肢しかない状況はなく、その時々に応じて、最適な判断を、素早く行っていかなければなりません。しかも、それは選手自身が行うものです。なので、大抵、この「判断」の部分で、選手の優劣というものはでてきます。そのため、フランスの練習では、できる限り判断を伴う形で技術を習得しようとしています。ここは、日本でもよく議論されるところですが、戦術のトレーニングにおいても、指導者が答えを教えるのではなく、選手自身の力で答えを見つけ出させる訓練をさせます。では、指導者は何をするのかといえば、選手自身が自ら良い判断を行うために、その前提としての、視野、ボディーシェイプ、ポジショニングを徹底的に指導して、習慣化させます。
3、基本の習慣化
フランスにおける指導では、「基本の習慣化」に最も力を入れています。そこでは、「指導というのは、技術・戦術を教えることではなく、習慣を身に付けさせるものである」という意味合いを色濃くだしてきます。体の向き、パススピード、ファーストタッチ、ワンタッチコントロール、攻守の切り替えの早さ、常にゲームに参加していることなど、様々な面で「良い習慣」を身に付けさせようとします。ですから、指導者は「練習を与える」という姿勢ではなく「どのように練習に取り組ませるか、悪い習慣をどう矯正するか」という面のほうが重要視されていて、これが「指導者の役割の中での戦術より、マネージメント能力の重要性」をあらわしています。
知らないことを教えるというのは簡単なことです。しかし、既に知っていること、ごく当たり前のようだと思われていることは、実際には「できていない」ことが多く、そういったものを「できるようにさせる」、そして「無意識的(オートマティック)にできるようにさせる」、つまり「習慣化」させるということは、相当に時間がかかることで、もっとも神経をすり減らせる、とても難しいことです。そして、この時間のかかるものはどうしても「後回し」にされてしまい、目の前の試合や大会で「勝つため」により即効性があるものを練習メニューに多く取り入れて、それで試合に勝ったとしても、根本の問題が解決されていないことはよくあることです。
技術や戦術を教えるのは簡単ですが、それを「習慣化」させるのは難しいことであり、最も大切なことであるというのがフランスの姿勢です。そのため、新しい戦術や、新しい技術ばかりを求めるのではなく、基本的なことを何度も繰り返して行う努力が必要になるでしょう。
4、コンセントレーション&ディシプリン
例え、同じメニューを行ったとしても、トレーニングの質というもので、「良い練習」にも「悪い練習」にもなってしまいます。基本的には、笑顔もあり、ジョークもありという中で、明るい雰囲気で進むのがフランスのトレーニングですが、そこではディシプリンというものが存在していて、それに対しては非常に厳しい姿勢を持っています。このディシプリンによって質が保たれているようです。
不必要なファールや、パスを出した後に突っ立てる選手などに対しては、厳しく指導が入ります。またプレー中の互いのボディーコンタクトは、いわゆる「ガチンコ」といわれるような激しさが求められ、例えば、ボディーコンタクトで倒れた選手に対しては、指導者も選手も助け舟は全く出さずに、倒れた選手は、自分ですぐに起き上がってくるように指導されます。
以上のような楽しく、厳しく、質の高い練習を、高い集中力を持って行うようにするのが、フランスのやり方で、そのため、練習は長くても「2時間」ぐらいしかやりません。長い練習が質の低下や集中力の低下につながり、それが「悪い習慣」を身に付けさせてしまうのを防ぐためです。
ここまでみてきて、1、コーチとしてあるべき姿、2、選手の自主性(判断力)を育てる、3、基本の習慣化、4、コンセントレーション&ディシプリン、がフランスの若年層指導の基本的なポイントで、こういったコンセプトに基づいた指導を、長年続けてきたことが、現在のフランスサッカー界の繁栄へとつながったといえるでしょう。
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