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▼gliderさん:
初めまして。いつも「う〜ん、なるほど!」と思いながら読ませてもらっています。
素の状態論も大変興味深く読ませてもらっているのですが、いくつか思うところがあるので、ご意見伺えれば幸いです。
>例えばこんなことです。
>
>「日本チャンピオン」のボクサーは、東洋太平洋4位でした。世界ランクは40位くらいです。
>しかし、スポンサーの意向によって彼は一桁世界ランカーと連続で対戦することになりました。
>そこでマネージャーは彼に世界レベルのトレーナーをつけます。
>トレーナーは彼がランキング一桁のボクサーと試合をしても勝つ可能性が出るように、独特で複雑な必殺の「スペシャル・ステップ」を叩き込みました。
>彼のパンチ、ブロックではまともにやったら勝てる見込みはないからです。
>その必殺ステップで、彼は強豪たちに善戦しました。
>しかし、最後の部分で彼のパンチではどうしようもなかったのです。
>連戦が終わり、トレーナーは去りました。
>彼は、スペシャル・ステップは一度忘れ、もう一度基本にかえってパンチやブロックを鍛え直さねば、と思いました。
>そうでなくては世界チャンプにはなれないから。
>しばらくは彼は本来のポジションで勝ったり負けたり、もがいていましたが、前とは意識が違いました。
>少しづつ、彼のパンチは鋭さを増し、防御はしぶとくなりました。
>次の世界への挑戦の時には、再びスペシャル・ステップも練習するつもりです。
まず、一つ疑問なのが、トルシエ氏が教えたのはスペシャル・ステップなのか?ということです。言うまでもなく世界のサッカーはヨーロッパを中心に回っていますが、ラインディフェンス・コンパクトネス・ショートカウンターあたりはヨーロッパでは非常にスタンダードな戦略です。私はトルシエ氏のフラットスリーはスペシャルステップではないと思います。「独特で複雑」ではなく、非常に基本的でスタンダードな策であると思います。
トルシエ氏は積極的なラインディフェンスからコンパクトに保ちなるべく敵陣に近い所から攻撃を始める方法を選択しました。ジーコ氏は曰く「最終ラインは一人余れ。」という全く違った方法を選択しました。つまり方法論の違いではないのかということです。
トルシエ方法をアウトボクサー、ジーコ方法をインファイターだとします。
つまり、いままで外からステップを使って手数で勝負するタイプだったボクサーに新しいコーチがやってきて、「外から勝負するようなマヌケなことをするな!そんなことでは世界16位がせいぜいじゃ!おまえが肉弾戦をマスターすれば世界8位、うまくいけば4位はねらえるぞ!」っと転向をさせたようなものです。勿論、一番いいのは時と場合によってアウトボクシングとインファイトを使い分けることです。どっちも一長一短あるのですから。前任者は「日本人にインファイトは無理だ。徹底して足を使え」といいました。今度のコーチは「足を止めて打ち続けろ」と言います。
この素直なボクサーは確かに最初は得意の足をコーチに封じ込まれ、苦手の肉弾戦を強いられ負け続けることでしょう。しかし、その内肉弾戦のいなし方も覚え、インファイトでもアウトボクシングでもいい戦い方ができるかもしれません。幅が広がれば相手が戦いにくくなるのは間違いないでしょう。
ですが!あくまでそれは戦いの方法論の違いであって、パンチを強くしたり、スピードを速くしたりと言った基礎強化にはつながらないと思います。サンドバッグに打ち込んだり、走りこんだりするのはもっと日常的なことであって、年に数回しか集まらない代表ではすることではないし、できないでしょう。
あくまで想像ですが、ジーコ氏は非常に日本代表の実力を高く評価していると思います。前のワールドカップを見ていて「(ボクシング的に言うと)そんな外から打ってるから判定で負けるんだよ!実力がある(パンチ力・スピード)んだから、もっと中で打ち合ってギッタンギッタンにしてやれ!」と思ってたんじゃないでしょうか?
そして、真正面から相手にすれば日本代表は負けやしないと思って代表監督を引き受けたものの、中々勝てない日々が続き「(実力があるのに勝てないのは)集中力が足りないからだ」と考えました。しかし、それでも内容は悪くなるばかりで少し過大評価してたのかな・・と思い始めているのではないでしょうか?(邪推が過ぎるかもしれませんが)
ジーコ氏にいわゆるインファイトをうまく指導できるのかも疑問ですし、再びアウトボクシングを組み合わせるとも思えないし、とりあえず素を鍛えようなどとジーコ氏は思っていないでしょう。きっと。
そもそも世界40位が世界ベスト10に普遍的に勝つようなスペシャルステップが存在するのでしょうか?そんなものがあれば、世界ベスト10はみんなそれを身につけるでしょう。サッカーの世界におけるスペシャルステップは徹底的に引いてカウンターであるとか敵を徹底的にスカウティングして敵のキープレーヤーを徹底的に潰すというようなことだと思います。そしてトルシエ氏が取り組んだのはむしろ王道的なチームの強化方法だったと思います。
長々と乱文を書き連ね失礼いたしました。主張としてまとめますと「トルシエ氏の導入したのはスペシャルなものではなくスタンダードなものだ。ジーコ氏は異なる方法論を導入しようとしているのであって、素を鍛えようなんて気はなかろう」というものです。
かなり印象批評的ですが、恐縮なんですがご意見いただければ幸いです。
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