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ぼくは、こう思ってるんです。
フラット3について。
まず、コルグさんの言う通り、ラインコントロールすることそのものが重要なわけではなく、「ボールに対し主体的に守備すること、そういう強い気持ちを持って守備をすること、それをしやすくするための具体的方法論」こそが「トルシエ式フラット3」の根幹だとぼくも思います。
「積極的にサッカーをする強い気持ち」「コミュニケーションを大事にプレイすること」「戦う激しい気持ちを持つこと」が主で、具体的方法論はそのための従であると考えます。
何かを作る時、大事なのは「思想」でありそれを表すための具体的方法論です。
ただし、「サッカー」という具体的なプレイをする競技ですから、いくら言葉で「主体的に守るんだ!」と言ってもそれではね。
というわけでトルシエはまず、基本的な動きを叩き込む。
体が自然に反応するようになるまで、繰り返し繰り返し、やる。
それが第一段階です。
この時点では、選手は自分の判断で約束事を無視することはありません。
教えられたことを、そのまま忠実に実戦でも繰り返します。
ラインを保ち、ボールが後ろへ下がればラインを上げ、前へ出てくれば下がり、ラインの前で持たれたら、ラインを維持して相手との距離を保ち、MFの帰りを待つ。
基本的なポジショニングは、ゾーンのバランスによって決まっている通り、相手がいてもいなくても、入ってくる相手がいそうになくても、きっちりとそこを埋める。
味方間の距離を均等に保ち、ボールの動きによってラインの上下、ゾーンの移動をきちんとやる。
それさえ守っていればトルシエは文句を言いませんが、それを守らないと襟首を掴まれたり控え選手がアップをはじめたりします(笑)
この段階では、先の「主」の部分は、「そうできるための準備を整えている段階」ですね。
そうこうしているうちに、少しずつ余裕が生まれ、相手やボールの動きを以前よりも落ち着いてみることができるようになり、「読む」ことができるようになる。
「次」のことを考えられるようになる。
なにせ、ゾーンバランスは恒常的にほぼ整い、なかば自動的にコンパクトフィールドが作りだされ、近くに味方が常にいるわけで。
で、インターセプトが生まれたりまだ相手ボールの時に攻撃のために動いたり、そのカバーにすっと入ったりするようになってくる。
試合の中での良い時間帯には、そういうことができてくる。
主体的なサッカーとコミュニケーションの成立。
第二段階ですね。
そして、自信をつけてきた所で自分達よりもはるか強い強豪チームにあたる。
サンドニ。
バランスを保っていても、プレッシャーはかからない。
埋めているはずのゾーンを、相手のパスがビシビシ通り抜けて行く。
人はいるのに、どんどん突破されてくる。
ラインを上げても並ばれ動きを見切られ駆け引きに敗れ、走り負け、ぶち抜かれる。
「オートマティズム」は、意味のないものとなり、組織は寸断され、バランスは崩れ、バラバラになり、打ちのめされる。
何が違うのか。どうしてこうなってしまったのか。
まずは「戦う気持ち」。それが足りなかった。
サッカーは格闘技でもあった。それを忘れていた。
体を寄せ、相手にぶつかり、体をネジ込み相手をどけ、激しくボールを奪う。
そういった気持ちを忘れていた。
だから、寄せが甘くなり相手に自由を与えた。たまに得たボールもあっさりと奪われた。
こちらはボールをまったく奪えなかった。
そして「スピード」。
彼等は判断の速度が圧倒的に速かった。
次への動きが圧倒的に速かった。
バランスを整えゾーンを移動した時には、彼等はもう次なるスペースへとボールを動かしていて、そこへはもう次の選手が走り込んでいた。
全部、後手後手だった。プレスはいっさいかからなかった。好き放題に回された。
学んだこと。
もっと激しく行かねばならない。ファイトせねばならない。
もっと速く予測せねば、判断せねば、動かねばならない。
上手に駆け引きをせねばならない。
先を見てプレッシャーをかけなばならない。
「次」のスペースへと出てくる相手とボールを「潰さねば」ならない。
そうしてまず松田が動き始めた。
相手が「おいしい」パスを入れてきた時、「なめるな」とばかりに前へ出て潰した。
裏を走ろうとする相手にボールが出そうになった時、走り込む相手へ体当たりした。
森岡は考えた。
相手がこちらのライン上下の動きの約束を把握し合わせてくるのなら、裏をかいたり先回りしたりしてやろう。
フっとひいて、バっとトラップもかけてやろう。
ライン上で余っていたら、前へ出て起点を潰しにかかろう。
早い判断をしよう。
相手がガっときていて押し込まれたらその時間帯は深く守って乗り切ることも必要かもしれない。
体力のことも考えて、割り切りも必要だ。
中田浩二は考えた。
ボールがオンサイドにある時は、左ハーフの小野をフォローするためにできる限りは外に少し広く守ろう。
できるだけ小野を前に出すために、左のアウトは守れる時はおれが守ろう。
そういう時は可能なら早めにつめられる位置取りをしよう。
これが第三段階。2001年でした。
ただし、まだまだ遅かったり下手くそだったりしていました。
森岡は前に出てもカラ振りばかりしていたし、松田はカードもらったりしていました。
いつまでも深く守りすぎていたりして、トルシエに怒鳴られたりもしました。
でも、ちょびっとずつでも良くなっているじゃないか、とぼくは自分に言い聞かせてました。
そうして、森岡はケガで離脱しました。
宮本は、そういう始終を見ていたので、自分の持ち味を考えながらも上乗せできると考えてました。
でも、杞憂した通りにやっぱり後戻りでした。ぼくが見た感じではスペイン戦の時点くらいにです。
・・・間に合わないんじゃないか?
まあ、スペイン戦の頃に比べたら戸田がそうとうやってるし松田も良くなってるし、相対的には上がってると思いますが。
余談だけど、その2人、そろそろ休ませた方が良くないか、と思います。
本番までに壊れたらどうしようもないから。
あの2人がいないとかなりヤバいと思います。
あと、戸田はもう一回モヒカンにして欲しい。キャラたって面白いから。
それと、ラインコントロールの部分ですが、宮本と森岡で言うほどの違いがあるようにはぼくには見えません。
ここ2戦を見ても、ボールが動くのに合わせて上下するのも同じ。
上げ下げのタイミングも変わらない。
ボールが入る角度と相手FWの位置と状態によっては、3人のうち1人が残ったようになるのも同じ。
それでも違うと言うのはどこの部分だろう?
動き幅が違うのかな?
違ったっけ?
でもそんなに違えばあとの2人は森岡か宮本かでそれを変えているってこと?
そうは思えない。そんな場合にいちいち宮本の動きを眼で確認しているなんてことは考えられない。
攻撃からボールを奪われて守備に至る時の下がり加減も同じくらい。
強いて言えば、森岡は前は上げられるのに上げない時があったかも?
とは言え、それも森岡があまり上げないのをあとの2人が見て確認できる余裕のある状況でしかないから、あくまでも「マイボール」時だ。
そしてそれはやらないとベンチが「プッシュアッププッシュアップ!!」うるさいから、結局は上げる。
よく言われるけど、ボールが下がって2人がラインを上げた時に、森岡が残るって言うのも実はあまり見たことはない。
いつもそんなことやってれば代表落ちでしょ。意味ないし。
ボールが入ってくる時に、角度と状況と相手の状態によって・・あ、これはさっき言ったか。
それは宮本もやってる。まあ、真ん中は少なくなるのは当然だけど。
みんなが違う違うって言うんだから、少しは違うのかもね。
でも見た限りではよくわからない。
違うか?かわらねーよって感じです、ぼくは。
トルシエも変わると思ってないでしょう、というコルグさんの意見に賛成。
あ、前は違いましたよ、前は。
宮本はすぐに動きを理解して忠実にやってたけど、森岡はトルシエに逆らってたのかわかってなかったのか、あんまりちゃんとボールの動きに合わせてなかったもんね。
宮本に関するぼくの不満は、守備の技術。
今回の2戦では、前より広く動くようになった。それは良いことだと思います。
ウクライナ戦の福西を見るとわかるんだけど、代表での試合数が少ないとスピード慣れしてなくてどうしてもポジションバランスを取るだけで「守備する」まで行かないで次のことに追い付かないでウォッチャーになってることがある。
イタリア戦の宮本がそう。
相手が速いとほぼみんながそうなるんだけど。
で、宮本は「守備する」まで行こうとするようになった。進歩。
でも、1対1での守備技術も足りないんだと思うんだけど、スカっと躱されたり、遅かったり。
前へ出た時だけの話じゃなくて。
詰めるタイミングは、森岡もヤバかったけどコンフェデ、キリンとやって良くなった。
それでも「ん~ちょっと・・ヤバいよね」って感じではある。
その部分で、この選手は大丈夫と思えるのは、中田(英)、稲本(良い時の)、戸田(最近)、松田(同じく)。
だから、宮本が本番に間に合うのかと言うと無理な気がしてる。
3バックのセンターとしては、ちょっと・・・という感じです。
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