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次はアルゴ・サッキのミランについてです。
おそらくクライフのトータルフットボールに強い影響を受けたシステムだと思いますが
トータルフットボールの最大の弱点である運動量の増加を削減するために
プレーエリアをコンパクトにすることが最大の目的とされました。
よって、取ったフォーメーションは中盤をすべて横に並べる4−4−2です。
最終ラインは俗に言うフラット4で、積極的な押上げをしました。
(もちろん両方ともプレーエリアのコンパクト化が目的です、
ちなみにDF形式はマンマークからゾーンに移行しました)
より正確に言うとプレーエリアをコンパクトにして、
より効率的にプレスをかけることが目的とも言えます。
で、プレス方法は実はクライフのころとあまり変わらなかったのではと思っています。
要するにボールの近くにいる人で人数をかけて奪ってしまうプレスです。
中盤が激しい運動量で積極的に高い位置からボールを奪いにいって、
そこからの早い展開で勝負するという、現代サッカーの先駆けかもしれません。
しかし、より激しいプレスが求められるようになったので
プレーエリアを狭くしただけでは、運動量を減らすことはできませんでした。
(むしろ、かえって増えたかもしれません)
なぜサッキがより激しいプレスを求めたというと
最終ラインをフラットにして、(プレーエリアを狭くするために)高いラインを保たせたからです。
中盤のプレスがかからないと、ラインが高いですからね、一発で裏を突かれます。
(あちらを立てれば、こちらが立たずですね)
ポジションチェンジについては、4−4−2という安定した形を取った布陣ですから
言及するような画期的なものはないですね。
(それほどゾーンのバランスを崩すポジションチェンジはなかったと思います)
敢えて言えば、ポジションチェンジのパターン2のスタミナ消費を抑えるものは当然行ったでしょう。
(一番近い人がポジションを埋めるというものです、言うまでもなく現代サッカーでは当然必要です)
結論です
この戦術の弱点は3つあります
まず1つ目は意外と中盤のプレスがかからないこと
プレスは上下左右異なる方向からかけることが効果的です。
(例えば3方向(異なる方向)からプレスをかけられると視界に入らない選手が出てきます)
中盤をフラットにすると、プレスがどうしても、1次的(前方からのアタッキングプレス)になってしまいます。
特に相手の中盤が2ラインの時は、相手ボランチまでこちらのCMFのプレスを届かせることは至難の技です。
次の2つ目はクライフの時と同じなのですが個人(特にCMF)の能力にかなり左右されます。
この4−4−2システム自体、かなりの自由度の高いシステムですが
特にCMFはかなりの多方面かつ広範囲のゾーンでの仕事が要求されます。
ミランの成功は、ライカールト、アンチェロッティという2人の優れたCMFがいたことは忘れてはいけない事実でしょう。
3つ目はフラットの4バックです。
1つ目、2つ目とにもかかわってくる問題なのですが中盤のプレスがないとフラット4は成り立ちません。
しかし、4−4−2では上記のような理由で構造的にそれは難しいです。
結果、ラインブレイクなどの対処法が編み出されましたが、
それでもこのままの戦術ではやはり裏抜ける選手に弱すぎます
この最終ラインは改善が必要でしょう。
現在この4−4−2はイングランドを中心にかなり普及していますが
最終ラインをフラットにしているにはアーセナルくらいで、
他のチームは1人にアッタキングさせて3人で守るなど柔軟に対処しています。
しかし、オーウェン、キューウェルなどスピードある裏に抜けるタイプに弱いのはいくら改良しても構造的に仕方ありませんね。
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