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gliderさん、こんにちは。
いつも興味深く拝見しております。
唐突ですが、『ジーコの全て! スーパーテクニック完全版』というDVDの中で、ジーコがシステムの変遷についてレクチャーしているチャプターがあります。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005HWLU/qid=1056977230/sr=1-1/ref=sr_1_2_1/249-4743449-6717143
それによりますと、
ブラジルでは、クラシカルな「2−3−5」システムから、ハーフの両サイドがバックスに下がり、またトップのうち一人がハーフに下がって、「4−2−4」に変化したそうです。
「2−3−5」 「4−2−4」
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●↓●
○ ○ ○ ↓ ○ ↓ ○ ●
● ● ○ ● ● ○ ○ ● ● ○
○ ○ ○
ですから、ブラジル式サイドバックの起源はハーフであるといえましょう(その後、4人のトップからさらに一人が中盤に下がったのが「4−3−3」で、ジーコが最もバランスがいいと思っている布陣がこの「4−3−3」のようです)。
また、サイドバックの守備について、ボールサイドの時は前へ出て中盤としての守備を、逆サイドにあっては中に絞ってDFとしての守備を、というようなことを言っていたように記憶しています。ですから、守備の強いボランチは(しかも攻撃的な性質をもっているならなおさら)サイドバックに適任といえるかもしれません(そういえば元鹿島のジョルジーニョもSBでありボランチでありました)。
稲本を右のサイドバックにというアイディアは斬新で過激なものですが、非常に理にかなっているようにも思います(稲本のサポさんは卒倒するかもしれませんが)。稲本の能力はピッチに置きたい、でも中盤の底を彼を置くならもう一人さらに守備バランスに優れた選手を必要とする。稲本を“右”で使えると中盤の組み合わせはとても自由になります。で、稲本を右で使うなら、左サイドには新井場をぜひ! 両サイドバックにガンバユース同期の「イナ・イバ」コンビなんて、まさに「飛車・角」といった大駒の趣。あとは稲本に90分×どの試合もムラなくプレイできるようになってもらえばOKです。
さて、前述のDVD中のジーコのコメントを聞きますと、ジーコが1982年のブラジル代表に誇りと愛着を持っているのは当然なのですが、一方では、ジーコにとって新鮮でインプレッシヴだったのが、「トータルフットボール」といわれた1974年オランダ代表のシステムであり、同大会で優勝した西ドイツの「リベロシステム」だったようです。フットボールに関わる人の多くがそうであったように、ジーコにとっても1974オランダは、大きな影響を受けた出来事であったと思われます。
その1974オランダの現場監督であったクライフさんに、ジーコが就任してすぐの2試合(ジャマイカ戦・アルゼンチン戦)をヴィデオで見せ、インタヴューをとった記事が昨年の「SPORTS Yeah! 誌」に掲載されていました。(SPORTS Yeah!. No.056, pp.5. 2002)
それによると、「(アルゼンチン戦は)結果は負けに終わったが、チームとしては問題がない。求めている方向性は間違ってはいないと感じた」「それまでの日本代表には、スピードが前面に押し出された、急ぎすぎたサッカーをするチームという印象があった。しかし新しい日本代表からは、それまでの特徴であるスピードに、テクニックを調和させていこうとしているジーコの意図を感じることができる。そのスピードとテクニックの調和こそ、今後、日本代表が追求していくべきものだ。・・・・」と述べていました。
そういえば、クライフもジーコもやせっぽちだったなぁ、などと共通点を思い出しながら、もしかしたらクライフもジーコも、スピードと効率を追求する現代のサッカーが、ややもするとフットボールの美意識を損なっていると感じているのでは、などと想像したのでした。
>「ファスト・フード」に対する「スロー・フード」のように、「速いサッカー」に対するアンチテーゼのように「スロー・フットボール」。
>もしかしたら、現代サッカーに対するアンチテーゼをすら・・・
という、gliderさんのご指摘は、私も密かに疑っているところです。
懐古趣味かもしれない。現代フットボールの流れに逆らう無謀な挑戦かもしれない。でもジーコは技術と創造性が価値をもつ、優雅なフットボールの伝統を今に再現しようとしているのではないか、などとつい空想が広がるのです。
どうもおじゃましました。
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